Si.ba.ki / 東京都文京区小日向
フレンチレストラン/スケルトン内装改修
東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅のすぐ裏手、
茗荷坂の中腹にあるフレンチレストラン「Si.ba.ki(シバキ)」は、フランス/スイス各地で研鑽を積んだ若手オーナーシェフが、伝統的なフレンチへの眼差しと革新的な感性を併せ持つ創造性豊かなコース料理を提供したいと開業した。レストランとはコース料理をじっくりと楽しむ場所であって欲しいとの思いから、ゆったりとした寛ぎのある空間が要望された。
どんな空間か思案する中で、ヨーロッパやアジア各地で見かけた家々の隙間を縫うような場所や農村部、そこで暮らす人々が食事を豊かに楽しむ姿が浮かんだ。それぞれの仕事や畑仕事の合間にさっとテーブルと椅子を屋外に運び出し、日中は心地良い陽光を浴び、日が暮れれば灯りを灯し賑やかに、時間を忘れ家族や仲間と食事を楽しむような何気ない日常の風景、その延長にあるような場所をイメージした。
客席は赤土を連想させる土間空間として、コンクリートにさび鉄由来の顔料を混ぜ打設し、一部に益子のリサイクルガラスと砂利を混ぜ研ぎ出して表情を付けた。また向かいの隣家に植わる大きな椿を借景としながら、昼は既存の大開口からの陽光、夜は灯火のような吹きガラスの灯りが印象的な空間にしている。オープンキッチンは客席を補完する小さな小屋に見立て、松板ラフソーン仕上げによる黒壁と深岩石を外壁、黒皮鉄板とウォールナット厚板によるカウンターを窓台のように設え、重量感のある素材をあえて荒々しい表情のまま仕上げた。
素材の持つ表情と粒度を入念にコントロールし、自然の風雨に耐えた素材が持つ荒々しさ=外部的要素、また研ぎ出しや鉄のような繊細な表情とを共存させることで、遠景と近景それぞれで眼や手で触れる触りを大切にしたいと考えた。素材の様々な荒さで覆われた客席と黒壁が街並みと繋がる風景の一つとなり、坂を行き交う人々にもその存在と素材性を感じ楽しんでもらえればと期待している。
ー掲載誌ー
・TECTURE MAG(テクチャーマガジン)
・ミシュランガイド2022
・ミシュランガイド2021
・シェフ 2019夏 123号
・TOKYO METORO NEWS 2019.03月号
・VISA 2018年12月号